(この記事は2020年9月25日に更新しました。)
老後の生活に関心がある人は多いと思います。
老後は豪勢な生活ではないけど、持ち家で悠々自適に暮らして、年に数回旅行にいく…。
そんな風に漠然とイメージしているものもあるかと思います。
その生活を支えてくれる基礎が「年金」です。
ではこの年金をどのように貰うのが得なのでしょう?
2020年3月に年金の受給開始を75歳からにすることが可能になりました。
そんな背景も考慮しながら年金について考えていきたいと思います。
ただ最初に言っておきたいことは、
「◯◯歳から受け取るようにすれば得」というのはない!
これは配偶者の有無や配偶者の年齢、寿命を考えると個別ケースが多いためです。
そのため年金の仕組みを理解して、自分のケースで改めて考える必要があります!
年金の繰り下げ受給は得か?


そもそも年金開始の年齢は?
2020年現在、年金を受給開始の年齢は60歳〜75歳の間です。
「75歳からじゃないと受け取れなくなる」というのはただの噂話です。
65歳を受給の基本的な年齢として、
60歳より前に年金を受給することを「繰り上げ受給」
65歳より後に年金を受給することを「繰り下げ受給」
と言います。
ちなみに、年金は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」があります。
老齢基礎年金→「国民年金」と「厚生年金」を支払ってきた人が貰える年金
老齢厚生年金→「厚生年金」を支払ってきた人が貰える年金
この2つの年金に関しては、それぞれ個別に繰り下げ(繰り上げ)受給することができます。
またこの他にも配偶者によって「加給年金」と「振替加算」というものもあります。
「加給年金」と「振替加算」は後ほど、デメリットの部分で説明します。
「繰り上げ受給」と「繰り下げ受給」は、それぞれ65歳から貰える受給額の『受給率』が違ってきます。
60歳からの「繰り上げ受給」では、
繰り上げする請求月から65歳になるまでの月数 × 0.5%が減額
となります。
60歳から1年ずつ減額率60歳(0ヶ月)から64歳(0ヶ月)を見ていくと、
繰り上げ請求した年齢 | 減額率 |
60歳(0ヶ月) | 30% |
61歳(0ヶ月) | 24% |
62歳(0ヶ月) | 18% |
63歳(0ヶ月) | 12% |
64歳(0ヶ月) | 6% |
例えば65歳から年額60万円(月額5万円)支給されるはずだったものは、
60歳0ヶ月に繰り上げ→
年額42万円、月額3.5万円
63歳0ヶ月に繰り上げ→
年額52.8万円、月額4.4万円
このように減額されます。
逆に65歳以降の「繰り下げ受給」では、
0.7% × 繰り下げ月数が増額
となります。
65歳から1年ずつ増額率66歳(0ヶ月)から70歳(0ヶ月)を見ていくと、
繰り下げ請求した年齢 | 増額率 |
66歳(0ヶ月) | 8.4% |
67歳(0ヶ月) | 16.8% |
68歳(0ヶ月) | 25.2% |
69歳(0ヶ月) | 33.6% |
70歳(0ヶ月) | 42.0% |
例えば65歳から年額60万円(月額5万円)支給されるはずだったものは、
66歳0ヶ月に繰り上げ→
年額65.04万円、月額5.42万円
70歳0ヶ月に繰り上げ→
年額85.2万円、月額7.1万円
このように増額されます。
さらに75歳まで繰り下げ受給すると、最大の84%の増額率となります。
すると65歳から年額60万円(月額5万円)支給されるはずだったものは、
75歳0ヶ月に繰り上げ→
年額110.4万円、月額9.2万円
このように増額されます。
60歳の繰り上げ受給で月額3.5万円、75歳の繰り下げ受給で月額9.2万円だと2.5倍以上違います。
しかし繰り下げするのであれば、受給期間が違います。
2018年、65歳男性が厚生年金を受給する平均月額は16万5668円でした。
簡易生命表(2017年)では、平均余命は
- 60歳で23.72年
65歳で19.57年
70歳で15.73年 - 75歳で12.18年
となります。
この平均余命と年金受給額を計算すると、
60歳 3300万9018円(平均余命23.72年/月額11万5968円)
65歳 3890万5473円(平均余命19.57年/月額16万5668円)
70歳 4440万5518円(平均余命15.73年/月額23万5249円)
75歳 4455万3824円(平均余命12.18年/月額30万4829円)
上記のようになります。
平均余命と受給額による『期待値』では70歳で受給するのも、75歳で受給するのもあまり変わりませんね。
繰り下げ受給のデメリット


具体的なデメリットは?
繰り下げ受給のメリットは、もちろん受給額が増額することです。
しかしデメリットもあります。
1. 年金の課税額などが増える

年金は課税されるよ!
年金が増えることにより、税金や社会保険料も増額します。
そのため手取り額は額面と同じ率では増えません。
例をあげると、65歳から受給額が年額230万円だとして5年繰り下げるとします。
すると70歳では増額率は42%となり、年額326万円となります。
しかし税金や社会保険料を引かれると年額約312万円、増額率は実質36%となります。
年金が増額する分だけの課税額などが増額されることがデメリットになります。
2. 遺族厚生年金は増えない

繰り下げ受給で増えない年金もある!
老齢厚生年金を繰り下げても、死亡後の配偶者が受け取る遺族厚生年金は増えません。
遺族厚生年金は65歳の年金額をもとに計算されます。
これを知った途端に「じゃあ繰り下げなくていい」という配偶者もいるようです。
3. 加給年金と振替加算は増えない

若い配偶者がいる場合は注意!
『加給年金』とは、一定の条件を満たせば扶養する人が65際になってからその配偶者が65歳になるまでの期間に受け取れる年金です。
さらに配偶者の生まれた生年月日によっては加給年金後に受け取れる、『振替加算』というものがあります。
この2つの年金は法令によって受給金額が決まっているため、繰り下げ受給によって金額が上下することはありません。
そして65歳以降の繰り下げ受給中は加給年金や振替加算は受け取れません。
加給年金は年額約39万円のため、大きな金額ですね。
以上のデメリット
◯年金の課税額などが増える
◯遺族厚生年金は増えない
◯加給年金と振替加算は増えない
があることを理解しましょう。
ちなみに65歳以降に年金を受給せず、生活費が足りなくなったタイミングで年金を受給することもできます。
その際は申請したタイミングからの増額率が受給できます。
そのため生活状況に応じて受給のタイミングを考えていきたいですね!
終わりに
いかがでしたでしょうか?
年金は老後生活の重要な資金になります。
そのため年金を理解することで、将来への不安を軽減できます。
理想としては繰り下げ受給しつつ、「もしも」のタイミングで申請するのがいいんではないでしょうか。
繰り下げ受給できるくらいの資産形成や仕事の継続も考慮したいですね。
年金はもしものためのお金として、資産形成をしていけたらいいですね!
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